The Valley Climbers

YOSEMITE'S VERTICAL REVOLUTION

ROKXの生まれた70年代、ヨセミテの風景

クライミングの聖地、ヨセミテ

ROKX の生みの親である MIike Graham は70年代の青年時代に、ここで多くの伝説的なクライマーたちと共に生活し、技術を競い合ってきた。ROKXの原点は、間違いなくここにあるといってよい。彼がヨセミテに魅了され、そこで人生をかけてクライミングに向き合うようになったきっかけは何だったのだろうか。

僕の生まれ育ったところは、カリフォルニアのほとんど岩場のないビーチエリアで、ちょっとしたボルダーくらいしかなかったんだ。小さいころからクライミングが好きだった僕は、よく学校をさぼってはビーチにボルダリングをしにいっていた。クライミングジムはなかったけど、当時練習の場所としてはその辺にある自然の岩場、ボルダーを使うのが一般的だったから。

この写真を見てもらえば、なぜクライミングパンツを作りたくなったかわかると思う(笑)。当時はみんなリーバイスのジーンズを履いて登っていた。足を上げるのはちょっと難しかったね。みんな穴をあけていたりしたよ。

ヨセミテはその当時から間違いなく世界で一番大きい岩場のひとつであったので、自然とそこにはずっとあこがれをもっていた。ヨセミテのことを知ったのは、ある貴重なガイドブックからだった。当時は当然携帯電話もインターネットもなかった時代だ。手に入る情報は限られているけど、それをみんな毎晩隅から隅まで、穴のあくほど読み込んでいた。その本は60年代に書かれた「グリーン・ローパーブック(A Climber's Guide to Yosemite Valley, Steve Roper)」と言って、エリアのルートの線が書いてある、岩と雪の美しい写真の大きな本だった。それが何よりも大切な情報源だった。

説明は基本的なことしか書いていなくて、とてもおおざっぱなものだった。「右のほうに歩いて行って、しばらく上に登ったら左にトラバース、しばらくして木があるからそこに向かっていきましょう」みたいにね。それよりも、僕らにとってはそこに書いてある人物の名前が重要だった。それはヨセミテの歴史そのものだった。イヴォン・シュイナード、トム・フロスト、ロイヤル・ロビンス、フリークライマー、ジム・ブリッドウェル…ヨセミテの歴史にリアルタイムで名を刻んでいる彼らにどうしても会いたいと思った。

私が幸運だったのは、私がヨセミテに飛び込んだタイミングが完ぺきだったことだ。ヨセミテのクライミングの歴史を切り開いた先人たちがまだ現役で登っていて、彼らとともにクライミングし、友人になることができた。さらにそれだけでなく、そのガイドブックには載っていなかった、これからの若いクライマーたちにも会うことができたんだ。

ヨセミテにはじめて訪れて、当時の自分の予想をもっとも覆したのは、不便な生活でも、ぶっ飛んだ仲間たちでもなかった。それはトンネルを抜けてすぐに見えてくるヨセミテ渓谷のパノラマだった。それは自分の想像力をはるかに超えた、素晴らしいものだった。今でもそうだ、あれはいつ行っても僕の想像を超えてくる。

こうして、ここからヨセミテでのクライミングライフが始まった。