未知なる処へ行こうと
する人を後押ししたい、
「旅」をする人を応援したい。
三宅島フリークライミングクラブ代表
有限会社沖倉商店(CAFE 691)代表
三宅島にて、日本最大級のスポーツクライミング施設「三宅村レクリエーションセンター」を開設し、一大ムーブメントを起こした立役者。
東京から南に約180kmの海に浮かぶ三宅島、近年クライミング・ボルダリングで盛り上がっていることを知っているだろうか?日本最大級のスポーツクライミング施設「三宅村レクリエーションセンター」が開設され、島民2400人の島で、施設会員数が4470名(2歳〜80歳まで!)。いかに島外からクライマーが三宅島に集まってきているか、それはもう一大ムーブメント。(※コロナ禍前の数字です。)
そんな三宅島でのクライミング・ボルダリングの盛り上がりを支える人物の1人で、三宅島でさまざまな活動を繰り広げる、元気なオジさん沖山さん。
そんな沖山さんは、プロフィールとして書かなければいけない肩書きがたくさん…。全てに全力投球。時代の流れに身を任せながら、過酷な運命を受け入れながら、しなやかに逞しく突き進む、その元気と力を分けてもらいましょう!
まずは、三宅島の情報をおさらい
東京から南へ約180キロメートル。壮大な大地と海に囲まれた火山島が三宅島です。東京都に属し、直径約8キロメートル、周囲38.3、面積55.5平方キロメートルの楕円形で、ちょうど東京の山手線に囲まれたくらいの大きさです。島の中央部には雄山(標高775.1メートル)があり、その火口の深さは約500メートルにもなります。
本島は活発な活火山で、約20年~60年周期で噴火を繰り返しています。主に玄武岩から成り、度重なる噴火は荒々しい海岸風景と独特の自然景観をつくりあげ、島全体が富士箱根伊豆国立公園に指定されています。2000年(平成12年)に噴火した雄山からは火山ガスが放出され、立入禁止区域、危険区域、準居住地区などの規制区域が設けられています。
島内には神着(かみつき)、伊豆(いず)、伊ケ谷(いがや)、坪田(つぼた)、阿古(あこ)という5つの集落が海岸沿いに点在しています。
source >三宅島観光協会 公式WEB
沖山雄一さんを語る上で、欠かせない10のコト
01 . 1928年創業、三宅島で4代にわたって続く沖倉商店代表
02 . 1983年高校2年生の時の三宅島大噴火でお店と家屋と思い出が溶岩に埋まってしまう
03 . 元リクルート辣腕営業マン(30代後半で脱サラし三宅島へ帰島)
04 . 三宅島で海が一望できるカフェ「CAFE 691」を2012年スタート
05 . 三宅村議会議員再選二期目
06 . 村おこしや島の復興のために奔走するイベント仕掛け人
07 . 40代で壁を登り始め、年間100日以上登るクライミング大好きフリークライマー
08 . 三宅島にストランディングしたマッコウクジラの骨をカービングするボーンカーバー
09 . カフェからクジラや虹、夕陽を撮影するフォトグラファー(patagonia surf tokyoでもスライドショー開催、コニカミノルタプラザ写真展展示)
10 . スピリチュアルな感性と大人の常識のバランスを保つナチュラリスト
Q. 東京の中心で一流企業でTOPの成績を残すほど活躍され、奥様や娘さんも内地東京都内の生活を順風満帆に送っている中での帰島を決意のきっかけは?
当時お世話になった尊敬する上司の一言が刺さりましたね。「三宅島が大変な時期に、お前はここでこの仕事をしていていいのか?」と言われ、元々、親を島に残していることもあり、また故郷の島が噴火の後の大変な時期で気がかかりだったこともあり、胸に突き刺さりました。
そして、2005年30代後半で会社を辞めて、しばらくフリーで仕事をしながら三宅島の家業の「沖倉商店」を手伝うことにしました。しかしそこにリーマンショック。フリーの仕事は壊滅状態になり2008年頃から沖倉商店を仕事の中心にしていきました。
家族は娘たち2人が高校生活や大学受験を控えるタイミングだったので、内地東京都内に残して単身三宅島戻りました。
Q. 帰島してからの生活はいかがでしたか?生活環境はもちろん、何かご自身に変化はありましたか?
祖父の代から続き、父から自分が引き継いで、このまま何でも屋としての沖倉商店を続けていくべきなのか?という葛藤はありました。会社を辞めて自分が本当にやりたかったのはこんなことだったのか?日々葛藤しながら過ごす毎日でしたね。
そんな中で、ボルダリング/クライミングと出会うことになります。
それは2008年に開催された「三宅島エコライド」というサイクリングイベントでした。サイクリングイベントでクライミングと出会う?と思われるかもしれませんが、自分もイベントの企画者として中心的に動きまして、このイベントでオプション企画としてビーチでのボルダリングを企画しました。私が初めてボルダリングを体験した瞬間でした。
その衝撃的な出会いは、今でも鮮明に覚えています。
またクライミングのインストラクターとして来ていた、ホグロフスの磯川暁くんとの出会いもこの時でした。三宅島のクライミング振興とカルチャー発展に尽力していただきました。その後何度も三宅島に足を運んでくれた磯川くんですが、不運にも白馬の雪山で雪崩事故で亡くなってしまいます。
私がクライミングに没頭するようになったのは、その後でした。私自身がクライミングを楽しむだけではなく、磯川くんのためにも「三宅島のクライミングを盛り上げようと。」40歳を超えてからのスタートでした。
Q. 沖倉商店の営業から、カフェ691に家業の営業スタイルを変更されるきっかけはなんだったのでしょうか?
親が倒れたことがきっかけですね。2011年の11月、朝いつものように散歩をしていた父が道で倒れ、頭を強打し脳挫傷になり、本島の病院へヘリで緊急搬送されていきました。母も連れ立って一緒に。島に1人残されて沖倉商店の営業を続けていたのですが、娘たち2人の高校受験と大学受験が重なり、家計的にも辛さも重なり、精神的にはかなり追い込まれました。その時点で創業85年、3代にわたり続く沖倉商店を廃業し、別の仕事をすることも頭をよぎりました。そんな私を、たくさんの友人が助けてくれ、親身になって稼業のことや、この先進むべき道について助言をくれました。
そこで浮かび上がってきたのがカフェ経営です。沖倉商店の新しい業態としてのカフェ。葉山でファイブビーンズ(https://www.five-beans.com/)というコーヒー豆の焙煎と販売をやっている友達も後押ししてくれた。「三宅島ブレンドを作って送るよ。」と。クライミング仲間からはお店の中にクライミングウォールを作ろうよ。と元気付けてくれました。
実はサラリーマン時代に仕事柄もあり世界中を旅して見てきたカフェ。いつか自分もカフェ経営できたらなあ、なんて気持ちもどこかにありました。そこから3ヶ月くらいの構想を経て、店舗の改装など友達が手伝ってくれ、ほとんど今でいうDIYで行い、2012年の5月11日にオープンしました。
ちなみにカフェ691の名前の由来は、この場所の住所「三宅村阿古691」から。検討する時間に余裕がなく、海外から来た人も覚えやすいし、説明しやすいし、いいかなと笑
Q. カフェ691の営業をスタートされて、何か印象的だったことなどありますか?
営業スタート当初は無我夢中でしたよね、日々一生懸命でした。そんな中、オープンしてから3ヶ月ほどだった8月のある日、忘れられない出来事が起こりました。夜の虹を見たんです。
その日は、過去最高の1日54杯のコーヒーをお客さんに振る舞うことができて、クタクタに疲れた日だったんですが、満足感と達成感と疲労感がごちゃ混ぜになった中で、夜シャワーを浴びていたらスコールのような雨の後ふわっと外が明るくなったような気がしたんです。外を見てみたら、満月から3日ほど経った月の周りにドーム状に虹がかかっていました。興奮のあまり、全裸でカメラを持ち出し、撮影してみました。
「ハワイの人やポリネシアの人にとって、夜の虹はご先祖さまからの祝福のメッセージなんです。脱サラして帰島し、お父さんが倒れられて業態をかえながら代々つづく沖倉商店を守った、沖山さんの頑張りに対してご先祖さまが祝福しているのかもしれませんね。」と。
私は、鳥肌が立ちました。前述の通り、カフェの営業成績として過去最高にコーヒーを出した日で、奇しくもその日8月4日は祖母の命日。そのことを聞いてから自分の中での心持ちが何か変わったというか、自分がこの人生で進むべき道が見えてきた感じがしました。実際に、そこからいろんなことが起きて、さまざまな人と出会い、人生の歯車が噛み合って活発に動き出した感じがします。
沖山さんの人生やライフスタイルを変えることになったきっかけは、ほとんどが人から受け取った言葉。友人や先輩の言葉によって、突き動かされ大きな決断をし、今に至るそう。ご自身でも振り返ってこう語ります。
自分が成功するとか、何かを達成するとか、そういう事では喜べないというか心の底から楽しめないというか、50歳を超えて、自分の事よりも自分の周りの人たちが喜ぶ姿や夢をかなえる姿を応援したいそういう事にドーパミンがでるというか、脳が喜ぶ気がします。カフェ691にはいろいろな方が来ます。夢をかなえるあと一歩、ここから世界に飛び出していった方もいます。そういう方とカフェで話をして背中を押してあげたい。
やりたいことがわからない、そういう方はどこでもいいから旅をしたら良いと思う。旅と旅行の違いは旅は計画や目的を持たないで気の向くままに過ごすのが旅決められた時間に目的地に行きツアーのように過ごすのが旅行だと思います。旅をしない人は、本のページをめくらないで、ずっと同じページを開いている人次の1ページをめくりたくなる、次のページが気になる、まだ見たことない景色や人や場所のストーリー、それが旅です。僕はそんな人を応援したい。迷ったら三宅島に来てみてください。他の島のように煌びやかじゃないし、コンビニもマックもスタバもないけどディープな自然があります。虹やクジラを見に、イルカやウミガメと泳ぎに来てください。溶岩の大地で大きく深呼吸したり、水平線に沈む大きな太陽にストレスや悩みを吸い込まれる感覚を味わってみてください。